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「医業類似行為に対する取扱いについて」 に対する当会見解および対応

報道関係者各位 (平成28年4月25日)

 平成3年6月28日、旧厚生省(厚生労働省)は「脊椎原性疾患の施術に関する医学的研究」(通称、三浦レポート)をもとに「医業類似行為に対する取扱いについて」(医事第五八号)を各都道府県衛生局へ通知しました。この中に記載されている「いわゆるカイロプラクティック療法に対する取扱いについて」について報道関係者から質問が多数寄せられているため、これに対する当会の見解および対応を表明します。

一般社団法人 日本カイロプラクターズ協会 役員一同

当会の見解

(1)禁忌対象疾患の認識

 旧厚生省が参考とした三浦レポート(以下、同レポート)ではカイロプラクティックの禁忌となる疾患の例が挙げられていますが、その根拠が不明確です。著者らは何らかの文献を参考にして禁忌対象疾患について記載した可能性も考えられますが、参考文献の記載がなく、禁忌として挙げた疾患すべてについて検証していません。1)  さらには同レポート作成の委託を受けた研究班にはカイロプラクティック研究者が含まれておらず、医師のみで構成されています。カイロプラクティックが医療制度に組み込まれているアメリカ、カナダ、オーストラリアなどの国々で禁忌対象疾患が設けられていない事実についても調査しておりません。

 「カイロプラクティックの基礎教育と安全性に関するWHOガイドライン」2)(以下、WHO指針)に準拠した教育を履修したカイロプラクティック施術者はWHO指針で記述されている相対禁忌や絶対禁忌を理解することができます。3) 但し、WHO指針と同レポートの禁忌に対する認識は異なります。

(2)一部の危険な手技の禁止

 同レポートでは危険な手技として「頚椎に対する急激な回転伸展操作を加えるスラスト法」が挙げられていますが、ここでのスラスト法の定義が不明確です。またカイロプラクティックの主要な施術法であるアジャストメント(スラストを利用した手技)が危険であることを示す客観的な統計調査の裏付けがありません。

 WHO指針に準拠した大学教育が公的に実施されている海外では、頚椎マニピュレーション(頚椎アジャストメントと同義)による脳血管障害の発生頻度は40万回に1回 4)、100万回に2~3回 5)、100万回に1.46回 6)、130万回に1回 7)、585万回に1回 8)などと報告されています。また頚椎マニピュレーションと脳梗塞を関連付ける因果関係はない9)10)11)との報告もあります。こうした頸椎マニピュレーションによる事故の発生頻度は、国内における医療事故の発生頻度 12)に比べるとはるかに低いと推測されます。

 国際認証を取得した適正なカイロプラクティック教育では、WHO指針に基づいたリスクマネジメントのなかで、アジャストメントの危険性に配慮しています。11) 当然、こうした教育を履修した施術者は相対禁忌や絶対禁忌に対応できる知識を有しますが、施術者の教育背景により安全性が変わることを認識しなければなりません。

(3)適切な医療受療の遅延防止

 同レポートの指摘通り、カイロプラクティックの施術が適応でない場合は医療機関において精査を行う必要があります。しかしながら法律がない状況では、個人間の関係以外でカイロプラクティック施術者が患者(利用者)を医療機関へ紹介することはできません。正式にカイロプラクティック施術者が患者の紹介を行えるよう法律の整備が必要です。

(4)誇大広告の規制

 同レポートの指摘通り、誇大広告については業界全体の自主規制が必要です。現在、カイロプラクティックに関連する広告の規制については景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)が適用されます。さらには医療関連の法律に抵触する広告表記も禁止されています。

当会の対応

  当会は1~4の項目の対応として下記を実施しています。
●国民の健康と安全を考慮する観点から、WHO指針に準拠した教育の遵守と業界向けガイドラインによる自主規制を推進しています。
● 患者の安全性を担保する目的で「カイロプラクティックの安全性に関するガイドライン」13)を公表しています。
● 適正広告を促す目的で「カイロプラクティックの広告に関するガイドライン」14)を公表しています。

 各国政府によるカイロプラクティックの研究で有効性が認められており1)3)10)15)、国内での普及状況や社会的認知も平成3年の旧厚生省通知以降大きく変化しています。カイロプラクティックの普及とともに国民生活センターは未熟な知識や技術を持った施術者による健康被害16)を報告し、カイロプラクティックは総務省および経済産業省から「医療福祉」の事業17)、カイロプラクターは厚生労働省職業安定局から「保健医療」の職業18)として認知されています。

<参考文献>

1) 竹谷内克彰: 「脊椎原性疾患の施術に関する医学的研究」に対する医学的再検証. 日本統合医療学会誌. 2008; 1(2): 35-41.
2) WHO guidelines on basic training and safety in chiropractic.
World Health Organization. 2005, 20-24.
カイロプラクティックの基礎教育と安全性に関するWHOガイドライン.
日本カイロプラクターズ協会. 2006.
3) 福井次矢、他: 統合医療の安全性と有効性に関する研究. 厚生労働科学研究費補助金 地域医療基盤開発推進研究事業. 2009, 37-47.
4) Dovorák, J. & Orelli, F.: How dangerous is manipulation for the cervical spine? Manuelle Medizin. 1985; 2: 1-4.
5) Gutmann, G.: Injuries to the vertebral artery caused by manual therapy.
Manuelle Medizin. 1983; 21:2-14.
6) Coulter, ID. Hurwitz, EL. Adams, AH. Meeker, W. Hansen, DT. et al.: The Appropriateness of Manipulation and Mobilization of the Cervical Spine. Santa Monica. RAND Corporation. 1996.
7) Klougart, N. Leboeuf-Yde, & C. Rasmussen, LR.: Safety in chiropractic practice, Part I; The occurrence of cerebrovascular accidents after manipulation to the neck in Denmark from 1978-1988. Journal of Manipulative and Physiological Therapeutics. 1996; 19 (6):371-7.
8) Haldeman, S. Carey, P. Townsend, M. & Papadopoulos, C.: Arterial dissections following cervical manipulation: The chiropractic experience. Canadian Medical Association Journal. 2001; 165(7): 905–906.
9) Cassidy, JD. Boyle, E. Cote, P. He, Y. Hogg-Johnson, S. et al.: Risk of vertebrobasilar stroke and chiropractic care: results of a population-based case-control and case-crossover study. Spine. 2008; 33(4 Suppl): S176–83.
10) "「統合医療」情報発信サイト カイロプラクティック" 厚生労働省.
11) Peterson, DH. & Bergmann, TF.: Chiropractic Technique: Principles and Procedures. 2nd ed. Mosby, 2002.106-119.
カイロプラクティック・テクニック総覧. 新版. 産学社エンタプライズ, 2007.
12) 堺秀人、他: 医療事故の全国的発生頻度に関する研究. 厚生労働科学研究補助金 医療技術評価総合研究事業. 2006.
13) 蒲原聖可、他: カイロプラクティックの安全性に関するガイドライン. 日本カイロプラクターズ協会. 2013.
14) 蒲原聖可、他: カイロプラクティックの広告に関するガイドライン. 日本カイロプラクターズ協会. 2013.
15) "第174回国会 決算行政監視委員会第三分科会 第1号 平成22年5月17日(月曜日)" 衆議院ホームページ.
16) "手技による医業類似行為の危害-整体、カイロプラクティック、マッサージ等で重症事例も-" 国民生活センター. 2012.8.2.
17) "経済センサス分類表 平成26年11月総務省・経済産業省" 経済産業省.(オンライン)
18) "ハローワークインターネットサービス 医療・保健・福祉の職業" 厚生労働省職業安定局.