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「法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術は慎重に」に対する当会の見解および対応

報道関係者各位 (平成29年5月26日)

5月26日、消費者庁消費者安全課から「法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術は慎重に 1) のプレスリリースが公表されました。事前に当会からカイロプラクティック業界の現状について消費者庁へ説明を行いましたが、 結果として客観的なエビデンス(科学的根拠)に基づく調査や事故事例の検証がなされないまま注意喚起の通達が公表されました。

具体的には、(1)通達の内容が架空の被害報告ではない、(2)カイロプラクティックの名称を用いる施術者の教育背景を明らかにする、(3)施術者が用いる手技と患者の訴える被害の間に因果関係がある、の三点が検証されていません。

エビデンスに基づく調査なしに安全対策と称した通達を公表することは国民の不安感を喚起し、正当に業務に携わるカイロプラクティック施術者の営業権を侵害するばかりか、ひいては消費者庁の使命である「安心・安全な社会の実現」を妨げることになると思われます。少なくともこのような通達が公表されるにあたっては、前記したエビデンスの検証と厚生労働省と連携した今後の対応策に関する検証が必要不可欠であり、以下の理由の通り 2) 、当会はこの通達の公表に反対であるという見解をお伝えします。

一般社団法人 日本カイロプラクターズ協会 役員一同

当会の見解

(1) 厚生労働省の通知「医業類似行為に対する取扱いについて」

 1991年6月28日に出された厚生労働省の通知 3) の基である「脊椎原性疾患の施術に関する医学的研究」(三浦レポート) 4) は参考文献が全く記載されておらず、事故事例の内容の真偽を医学的に検証していないため、客観的なエビデンスが存在しておりません。 5) 消費者の観点から言えば、消費者庁が適正な安全対策を行うのであれば、エビデンスに基づく同レポートの再検証、もしくは公正な観点から同レポートに続く新たな現状調査の実施が必要です。 6)

(2) 禁忌対象疾患の認識

  禁忌対象疾患を評価する知識は教育背景により大きく異なります。厚生労働省医政局医事課へ登録者名簿を提出している日本カイロプラクティック登録機構(JCR)はWHO指針 7) の教育課程を履修したカイロプラクターの試験及び登録制度を実施しています。 8) JCR登録者は禁忌対象疾患の知識を有しているため、安全対策として消費者にカイロプラクティックを受診する際は「JCR登録者」を選択するよう勧告することが望ましいです。

(3) 一部の危険な手技の禁止

  三浦レポートでは危険な手技として「頚椎に対する急激な回転伸展操作を加えるスラスト法」が挙げられていますが、具体的な方法の定義が不明確です。またカイロプラクティックの主要な施術法であるアジャストメント(スラストを利用した手技)が危険であることを示す客観的な統計調査の裏付けはなく、頸椎マニピュレーションによる事故の発生頻度は医療事故の発生頻度 9) に比べるとはるかに低いことが文献から明らかです。 10) カイロプラクティック治療の危険性は施術者の教育背景により大きく変わることを認識しなければなりません。

(4) 「法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術は慎重に」

 この文面は消費者に対してカイロプラクティックの危険性のみを強調し、受診を控えるよう勧告している印象を与えます。2012年8月12日に独立行政法人国民生活センターが公表した「手技による医業類似行為の危害-整体、カイロプラクティック、マッサージ等で重症事例も-」 11) では、WHO指針によるカイロプラクティックの定義や整体・他の療法との違いが明記されていましたが、今回は整体・リラクゼーションとの違いについての記述がありません。カイロプラクティックについて記述するのであれば、WHO指針による「カイロプラクティック」及びその施術者の定義が必要です。

(5) エビデンスに基づく安全対策の提示

 先に述べた通り、事故事例とその業界背景が検証されてはじめて、エビデンスに基づく適切な安全対策が実行できます。安全対策のすべてを当業界の自主規制に委ね、カイロプラクティックの危険性を誇張する消費者庁の通達は消費者の混乱を招きます。また「統合医療」情報発信サイトの「情報の見極め方」を参考にしていますが、同サイトにはエビデンスに基づいたカイロプラクティックの安全性と有用性の記述もあります。

(6) カイロプラクティックに係わる安全対策の通達を公表するのであれば、下記の項目も安全対策として同時に公表するよう当会は消費者庁に対して要望いたしました。
  1. 厚生労働省の通達の基である三浦レポートの参考文献が記載されていないため、事故事例も含めてエビデンスが不明である事実を明記する。
  2. WHO指針や諸外国のカイロプラクティックの現状調査も必要であり、自称カイロプラクターが多い国内の現状や「カイロプラクティック」の定義を明記する。 12)
  3. 報告された事故事例のうち、内容の真偽の確認、カイロプラクティックの名称を用いる施術者の教育背景、施術行為と健康被害との因果関係についての検証を行う。
  4. 日本カイロプラクティック登録機構のカイロプラクター登録制度を紹介する。
  5. 「統合医療」情報発信サイトに掲載されている米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)のカイロプラクティックに関する安全性と有用性の情報を公開する。 13)
  6. 当会の活動内容: 
    A) 消費者庁所管の独立行政法人国民生活センターの要請により当会は「カイロプラクティックの安全性及び広告に関するガイドライン」を発行。 14)15) 
    B) 同センターの要請により「安全教育プログラム」を開講し当会会員以外のカイロプラクティック従事者全体に対して受講を促している。 16)
    C) 当会会員は禁忌対象疾患の認識を理解するのに必要な知識を有し17) 適切な医療受療については倫理規定により周知徹底している。
    以上

<参考資料>
1) "法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術は慎重に" 消費者庁. 2017.5.26.
2) " 「カイロプラクティックの施術に関する安全対策について(要請)」の件"  日本カイロプラクターズ協会. 2017.5.23.
3) "医業類似行為に対する取扱いについて" 厚生労働省
4) 平成2年度厚生科学研究「脊椎原性疾患の施術に関する医学的研究」報告書 (三浦レポート)
5) 竹谷内克彰: 「脊椎原性疾患の施術に関する医学的研究」に対する医学的再検証. 日本統合医療学会誌. 2008; 1(2): 35-41.
6)"厚生労働省「医業類似行為に対する取扱いについて」に対する当会の見解と要望" 日本カイロプラクターズ協会. 2016.4.13.
7) カイロプラクティックの基礎教育と安全性に関するWHOガイドライン. 世界保健機関. 2005.
8) 登録カイロプラクター検索 日本カイロプラクティック登録機構.
9) 堺秀人、他: 医療事故の全国的発生頻度に関する研究. 厚生労働科学研究補助金 医療技術評価総合研究事業. 2006.
10) "「統合医療」情報発信サイト カイロプラクティック" 厚生労働省.
11) "手技による医業類似行為の危害-整体、カイロプラクティック、マッサージ等で重症事例も-" 国民生活センター. 2012.8.2.
12) 福井次矢、他: 統合医療の安全性と有効性に関する研究. 厚生労働科学研究費補助金 地域医療基盤開発推進研究事業. 2009, 37-47.
13) "Chiropractic: In Depth" National Center for Complementary and Integrative Health (NCCIH).
14) 蒲原聖可、他: カイロプラクティックの安全性に関するガイドライン. 日本カイロプラクターズ協会. 2013.
15) 蒲原聖可、他: カイロプラクティックの広告に関するガイドライン. 日本カイロプラクターズ協会. 2013.
16) JCR試験受験資格プログラム(安全教育プログラム)の実施
17) "ハローワークインターネットサービス 医療・保健・福祉の職業" 厚生労働省職業安定局.